【J1第3節 】広く議論された上福元と小林悠の2つの出来事について考える
- 2022/03/11
- 2024/05/30
JリーグJ1第3節が行われ、多くのJリーグサポーターの中で話題となった2つの議題があった。
ひとつは京都サンガvsジュビロ磐田の一戦で起きたGKのファールによるレッドカードの判定について。もうひとつは、ガンバ大阪vs川崎フロンターレでの終了間際の川崎側のゴールについて、である。
目次
一発退場となった守護神 DOGSO適用となったゴール阻止シーン
事は京都サンガvsジュビロ磐田の試合、前半終了間際に起こった。
積極的な飛び出しと守備範囲の広さでチームの守備に貢献し、一番後ろから全体に伝えられる覇気によってチームの雰囲気を創り出す京都の守護神・上福元直人。
この日の試合も、センターライン付近まで顔を出しヘッドでクリアするなどその存在感は健在。
チームを一番後ろから支え戦っている最中のことだった。
前半45分、ジュビロ磐田の最終ラインから出た一本の長いパスは前線にいるジュビロ磐田・杉本健勇の元へ。
ペナルティエリアからはまだ距離のある斜め前の位置。ドリブルで持ち込むかそれとも中央部に上がってきていた味方にパスを出すかと思われた矢先、京都のGK上福元はペナルティエリアの中で待ち構えるのではなく、手の使えないエリアに飛び出し止めるという選択をした。
サッカーは時に、ファールで止めるということも選択肢として生まれる。フェアプレーではないかもしれないが、ファールであっても止めるべき場面もあるのが現実だ。
1対1の状況になるまで待ち構えるという選択、中央部に走ってきている選手にパスを出されるという選択(これにより2方向を気にしなければならない)、瞬時に考えられたであろうこれらの選択肢の中で上福元は、ペナルティエリアの外まで出て杉本をどうにかして止めるという選択をした。
フィールドプレーヤーを相手にするということは、GKが足元で真っ向勝負をするということはなかなか難しい。
ここはファール覚悟で身体や脚で止める、という選択となることは致し方ない。
杉本にとっても、GKが出てきたということはファールで止められると頭に過ったはずだ。
GKを避けてゴールを狙うというパターン、中央部に走り込もうとしている選手へのパスというパターン(この場合読まれてしまうとパスコースに入られてパスカットされてしまうというデメリット) そしてファールで止めようとしてくるGKに対し、どうファールを貰いに行くかというパターン。
これらの選択肢があったと考えられるが、結果起きたことは京都GK上福元とジュビロ磐田FW杉本のボールが離れた形での接触。
主審の真っ先な判断は、上福元へのイエローカード。
しかし、この後VAR判定となった。
その理由は『DOGSO』(ドグソ)に当たるか否か、ということだ。
今回の件は「DOGSO」に当てはまるのか?
DOGSOとは
「D」 Denying 阻止する
「O」 an Obvious 決定的な
「G」 Goal ゴール
「S」 Scoring 得点する
「O」 Opportunity 機会
「決定的な得点機会の阻止」という意味だ。
このDOGSOが適用になるには、4要件すべてに該当することで一発退場が適用されることとなっている。
- 反則した位置からゴールとの距離
- プレー方向
- 守備側競技者の位置と数
- ボールをキープできるまたはコントロールできる可能性
結果的にすべてに当てはまるという判定により、イエローカードは取り消され、レッドカード。上福元に対し、一発退場というジャッジが下った。
このDOGSOはその衝撃や強さに関係なく、要件に当てはまっていれば軽く接触したファールであってもレッドカードの対象となるが、このシーンは明らかにボールのないところで上福元が杉本の身体に当たりにいっていることがわかる。
ボールを止めるという形の接触ではなく、相手選手を倒しにいったことによるファール。
もちろんそれは上福元自身もそのファールによってピンチを阻止する覚悟あってのことだったと思うが、ペナルティエリアの外ということでイエローカードに留まると判断してのことだったであろう。
しかし、結果的にDOGSOに当てはまり退場。
その後、京都はフィールドプレーヤーとGKを交代せざるを得ない状況となり10人で戦う上に交代カードを1枚使うというアクシデントを迎え、その後は失点を重ね1-4で敗戦となってしまった。
ジャッジの議論も含めて楽しめるJリーグへ
ペナルティエリアの外であればゴールとの距離があるからイエローカードになるであろうといった考え方ではなく、今一度DOGSOに当たるファールというものを考えさせられるシーンとなった。
試合後、元国際主審であり審判を昨季引退した家本政明氏がSNSを通じ見解を提示し、DAZNの判定検証番組「Jリーグ ジャッジリプレイ」でも取り上げられるなど、競技ルールを今一度深く知る機会となったといえるであろう。
近年は、ジャッジに対する意見や見解、検証された詳細を知ることができるようになった。それは、Jリーグが歩んできた歴史と共に開いた扉といって良い。
少し前まで、ジャッジを含め審判の世界は封鎖された中にあり、ピッチの上での判定のみが絶対というようにそれについての意見や詳細、検証を見る側はもちろん競技者にもなかなか提示されるものではなかった。
しかし、今は審判の方々もSNSで発信をしたり検証番組が出来るなど、より距離が近くなりジャッジに対する透明さが生まれたと感じる。
今季Jリーグはすでに多くのレッドカードにより退場者が出てしまい、ジャッジに対する意見も多く見かける。
この一件も多くのサポーターが注目したシーンとなったが、今後も検証や詳細ができるだけ伝えられ、それも含めて考え楽しめるJリーグとして発展してほしいと願う。
川崎フロンターレの強さを感じさせる最後の最後まで突き詰めたことにより生まれた同点ゴール。
もうひとつは、ガンバ大阪vs川崎フロンターレの試合終盤、2-1でG大阪がリードしている状況で、試合終了までG大阪が総力を懸けてゴールを守り抜こうと全員で決死の守備をしていた中で起きた。
この試合で川崎はチームの中心である家長昭博をベンチスタートにした。連戦で積み重なった疲労によりできるだけ休ませたい考えだったであろう。ACL組である川崎はリーグ試合のみの連戦ということもあり主力選手たちの疲労が重なっていたこともあり総力戦となる上、仕方のないことだ。
だが家長一人が不在というだけで、この日の川崎の攻撃陣にパワーが感じられなかったことも確か。
後半13分、川崎は1-1の状況で得点を奪いに行くため、家長を投入。
家長が入ってからの川崎の攻撃はあきらかに変化があり、ガンバ大阪のゴールを脅かす攻撃を開始。
しかし、攻撃に人数をかけるということは同時に相手にスペースを与えてしまうというリスクも隣り合わせとなり、後半32分にはG大阪小野瀬の距離のあるところからのスーパーゴールにより再び失点。 1-2となり、G大阪はその1点リードを守るため全員で守備を固めた。
一瞬の隙きをついた川崎のゴール
そして迎えた試合終了間際。
後半45分+5分のATがあと数秒で終わるであろうと思われていた時。
それまで集中して守ってきたG大阪に一瞬の隙が生まれた。
GK石川がゴールキックをしようとピッチにボールを置いた際に、川崎・小林悠が石川の背後にまだ残っていた。
それに気づいていない石川の足元から、忍び寄った小林がボールを奪いレアンドロ・ダミアンにパス。
ボールを奪われたことにハッとした瞬間にはもうレアンドロ・ダミアンがシュートを放っており、ネットを揺らし2-2の同点で試合終了となった。
賛否あるが最後まで粘った結果生まれたゴール
勝利が見えていたG大阪にとっては大きなショック、大きな失点となってしまった。
対する川崎は、一瞬の隙を見逃さず、最後の最後までゴールを奪うことにこだわりを持った結果。
80分過ぎから試合終了までの間に生まれる劇的ゴールにより何度も強さを見せつけサポーターを揺らしてきた「川崎らしさ」の一面ともいえるであろう。
この小林のプレーに対し、一部では否定的な意見も見られ批判の声もあったが、ファールでもなんでもない最後までチームのために戦った結果である。
したたかなプレーも強さの理由である上に、相手の視界の死角がどこか、右利きにとってどこにボールを置かれると嫌か、左利きはどこに足を出されると嫌か…など川崎に限らず選手たちは常にほんの一瞬のほんの僅かな判断をして戦っている。
だからこそ、エキサイティングであり、Jリーグは面白いのだ。
まとめ
京都・上福元の件も、レッドカードになってしまったが、あの場面で飛び出していなかったら1点を獲られていたかもしれない。代償は大きかったが結果的にあの場面での1点は生まれなかった。
積極的に飛び出しチームの最後尾からチームを鼓舞する上福元は、京都サンガの強力なパワーでありJリーグサポーターを湧かせる素晴らしい選手であることは確かだ。
したたかな小林のゴールかもしれないが、あの場面でGK石川に味方が後ろ!と声がけすることもできたはずだ。集中して守備をするというのはとても体力と気力を使い疲れるからこそ、このプレーで終わるであろうという一瞬の安堵が隙となってしまい突かれたG大阪は今後、絶対にその隙をみせることはないであろう。
GK石川もいかなる時も死角を作らず背後をチェックして戦うはずだ。
こういった出来事により議論が生まれ、実際に戦っている選手たちもまた立ち止まって考える機会となる。
より深くJリーグを知り知識を深めることに繋がることで、Jリーグが発展し、より魅力的になるであろう。
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カテゴリ:サッカーコラム